東日本大震災でダメージを受けた福島県南相馬市で生活する、上野敬幸さん一家を写したドキュメンタリー映画『Life 生きてゆく』を紹介します。
山梨出身でフリーのジャーナリスト・笠井千晶さんが、5年半かけて上野さん一家に寄り添い制作されたこの映画は、一般メディアからは分からなかった、被災地の現実が迫ってくる内容です。
2018年、第5回 山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞しました。
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Life 生きてゆく 予告編
Life 生きてゆく 内容
「忘れないで欲しいっていう気持ちは、ないんですよ。風化するのはしょうがないことだと思ってる。でも忘れる前に、福島で起こったことは、まだ知られていない。福島の本当の現実を、ただわかって貰えたらって思っています。」 上野敬幸さん(「Life」主人公/福島県南相馬市萱浜在住)
撮影開始から5年半をかけて完成したこの映画は、津波と原発事故がもたらした福島の“知られざる悲しみ”を伝えます。ゆっくりと乗り越えるように歩み、前を向く上野さん一家。その姿は、私たちに問いかけます。家族とは何か—、そして、生きることとは—。
Life 生きてゆく 感想・レビュー
観るまでは、政治色の強い映画だと勘違いしてた
実は、自分はこの映画を観る前、
「あ、また反原発キャンペーンの映画か・・」
という目で捉え、何か特定の政治的イデオロギーを持った映画だと、失礼ながら思っていました。
しかし、「Life」を観終わった後、自分は東北の震災というものを、あまりにも一括に観ていたのではないか、という反省が生まれました。
震災のニュースで見ていて、「〇〇地区の人達」という大きな区切りで観てしまっていた自分。
「Life」は、上野さん家族のインタビューを通して、被災地で懸命に生きる人たちの姿を、細かく丁寧に写しています。
笠井監督が撮影した映像が淡々と流れ、それが観ている側に、よりリアルに臨場感を持って伝わってきたのです。
東電と社員に対する複雑な心境
映画では、原発問題ばかりで、津波で行方不明になった人には触れられていない様子が映されています。
そのような現実に、上野さんは「おかしい」とカメラの前で訴えます。
一方、東京電力の社員の人の中には、津波で命を落とした人たちにお線香をあげるため、毎朝、萱浜に通われた人もいたそうです。
上野さんは、東電を許せない気持ちや、毎朝手を合わせる社員の方の誠意に対する思いなど、複雑な心境を語っています。
一括に被災地を見ていた怖さ
この映画を観ていて、「東電がすべて悪い!」というような一括に出来ない、テレビだけでは分からないものがあるのだと自分は知りました。
また、普段自分達がテレビで観ているニュースでは、何か災害があると「行方不明者が何人・・」という数字しか伝えていません。
しかし実際は、そのお一人おひとりに、それまでの人生があり、大切な友人・家族がいるわけで、そうした感覚にマヒしていた自分に怖さを感じました。
繊細な姿・心の変化を写している
「Life」では、被災地で生きる人達の、心の繊細な葛藤が映されています。
テレビ番組だと、予算や時間が限られているので、要領よく端的にメッセージを伝えてしまう部分があります。
現代は、あまりにも合理的に物事が進む世の中ですが、人の心の変化は、合理的ではなく時間がかかるものだと思います。
そうした、人の中にある大切な心の繊細な変化や想いを、自分は「Life」から感じ取ることが出来ました。
映画では、上野さんの愚痴ったり怒ったり泣いたり笑ったりといった、ありのままの姿が映されています。大勢の人たちに観られるわけなので勇気がいる事だな、と感じました。
上野さんの家族を通しながら、被災地で生きる人達の姿を写したこの作品により、これまで知らなかった震災の様子、そして、人として生きていく事のあり方について考えさせられた作品です。
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「家族写真」笠井千晶 著 Life 生きてゆく 書籍・本
「家族写真」(小学館)は、「Life 生きてゆく」を完成させるまでの笠井千晶監督の心情や、映画では映されなかった、様々な出来事が書かれたノンフィクション本です。
上野さんと監督が、どのように出会ったのかも書かれています。読んでいて、人の縁の不思議さというものを感じました。
第26回小学館ノンフィクション大賞を受賞。
Life 生きてゆく キャスト・スタッフ
主人公:上野敬幸
監督・撮影・編集:笠井千晶
音楽:Steve Pottinger (スティーブポッティンジャー)
タイトル題字:優和 恵
イメージ画:小原風子
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